おおむねつまらない抄読会の唯一の目覚まし

は、ケータイと脳腫瘍について調べた論文だった。ケータイは耳のすぐそばで強力なマイクロ波を発する。これが脳に悪影響を及ぼすのではないかという考えは自然である。マイクロはといえば電子レンジ。こんなものを耳の横で使ったら脳がゆだってしまうのではないか、というのはもちろん素人考えだが(周波数が違うので大丈夫)、まあ電磁波というのが良きにつけ悪きにつけ身体に何らかの影響を及ぼす可能性があることは否定できない。

で確かスウェーデンで行われた調査だったと思う。調査に参加した人々を使用時間によって4群に分け(もちろん全く使わない人も含まれる)、髄膜種と神経膠種の発生率を調査したものである。前向きだったか後ろ向きだったかは忘れてしまった。

そしたらなんとなんと、ケータイの使用時間が長いほど、これらの脳腫瘍の発生率が有意に低下したのであります! マイクロ波とはいっても電子レンジに使われるものとは波長が違うので脳の組織をあっためるところまではいかないだろうが、がんに対する温熱療法もあることだし、もしかするとケータイの周波数帯域が何らかの形で脳腫瘍予防・治療に役に立つかもしれない。

わが丸川大学病院では、少なくとも内科の病棟に関する限りケータイを事実上解禁している(と別の大学から見学に来たO君から知らされた。なるほど、ケータイの使用をうるさくとがめられないわけだ)。ケータイの電波が医療機器、特に体内埋め込み型ペースメーカーに誤作動を招く恐れがあるとの報告がその根拠となっているのだが、実際にケータイが原因でペースメーカーが停止して患者さんが亡くなったというような報告はいまだかつて聞いたことがない。

最近のケータイはペースメーカー等に誤動作を起こさせるような周波数を混入させないような工夫がされているし、いまだ古いペースメーカーも多いものの、新しいペースメーカーはこうした省電力端末の電波への対策が講じられている。総務省も22cm以上離していればまず誤動作は起こらないとの調査結果を公表した。丸大病院の場合、もしペースメーカー停止事故が起こっても、それに数十秒で対応しうるような院内体制が整っているという自負もあるのかもしれない。こうしたことから、ペースメーカー装着率の高い循環器病棟や、人工呼吸器を装着された患者さんのいる病棟(ICU、外科系病棟の観察室)などを除けば、ほぼケータイを自由に利用できる。

ケータイはもはや生活に欠かせない道具の一つとなっている。それは医師であれ、患者であれ、コメディカルであれ、同じことである。それほど危険がなく、たとえ最悪の状況が発声してもそれに対応しうるのであれば、あまりに神経質に禁止することはないのではないか。