戒楽会

母校の音楽のK先生を囲んだ在校生/卒業生演奏会。インターネットで偶然その情報を見つけて、すべり込みでエントリーさせてもらったのだ。

会場に着いて、発起人のO氏や世話人のM氏に挨拶。O氏も他大学の医学部6年生で、国家試験終了と同時に南の島へ行っていたらしく、真っ黒に日焼けしていた。うーむ、うらやましい。国家試験が終わってからも九州を抜け出してすらいないのに。
会場は久留米のえーるピア(中央公民館)の視聴覚ホール。客席数は250くらいでこじんまりとしているが、そんなこじんまりとしたホールにスタインウェイがおいてある。スタインウェイには役不足じゃないのかなあ、こんな小さなホールは。響きすぎて音量調整もうまく利かない。でもまあ、少し弾いているうちに鳴れてきた。
それにしてもみんな相当すごかった。リハーサルを舞台袖から見ていたが、T先生のお嬢さん(高1)のドビュッシー「ピアノのために」より『プレリュード』や、Y氏(53回生)のショパンスケルツォ第2番』など、めちゃテクを要求する曲をがんがん弾きこなしている。楽譜を見せてもらっても、ハンパなく書き込みがしてある。翻ってみると、僕の楽譜は真っ白でなんだか恥ずかしくなる。もともと教科書にも合唱の譜面でもいっさい書き込みをしない人で、例外的に英語のオーケストレーションの教科書に抄訳を書き込んだぐらいだ。

僕は高校時代についていたピアノの師に「お前は指は動かんけど色気だけはあるなあ」と言われて以来、テクで攻めるのはあきらめて、いわば“バラード路線”に転換した。今回のプーランク『メランコリ』もコテコテのバラードである。指を速く動かす必要がなく、メロディーが美しく、その割に全く知られていず、現代の作品でもあるため、ミスタッチをしても気づかれない(!)というお得なナンバーだ。が、リハーサルではK先生ご夫妻が客席にいらっしゃったので、激しく緊張して、3小節目ぐらいから崩れ落ちてしまった。

そんな状態で持ち時間を使い果たしたあとでの、15年ぶりの一人きりのステージ。直前のサン=サーンスクラリネットソナタ」の二人組が軽やかな音色を響かせるなかで上がる心拍数(ちなみにO氏は心拍数をちゃんと測定していたらしい笑)。そして自分の番。しっかり気を落ち着けたつもりだったが、8小節目をすぎたあたりでミスタッチを繰り返し、とうとう弾き直しをしてしまった。このことで開き直り、後はかなり順調に最後まで弾き通すことができた。まあ、いっか。

その後は客席に行き、この音楽会のメイン、K先生ご夫妻の連弾を聞かせていただいた。さすがご夫婦、息もぴったり。先生方はここ15年ほどはずっと連弾で演奏活動をされているらしく、ラヴェル作曲「マ・メール・ロワマザー・グース)」でコンクールに出たこともおありになるそうだ。「マ・メール・ロワ」はオーケストラ版が比較的有名(らしい)が、大変面白かった。ドビュッシーは好きだが、ラヴェルはあまり聴いたことも弾いたこともない。これから勉強していきたいところだ。

ピアノが弾けたことでほっとしてしまったからか、その後に行った信愛女学院高校合唱部定期演奏会賛助出演のリハーサルでは歌詞がしどろもどろになった。指揮のN先生は暗譜をあきらめて楽譜を持つよう指示。……申し訳ありませんでした。

そしてその後に再び戒楽会の打ち上げに合流。在学中ほとんどお話ししたことのなかった英語のT先生から興味深い話をいろいろと伺ったり、結構多かった医学部生/医者の後輩たちと話をしたり、門下生の方と「演奏は誤魔化しの上手下手によって決まる!」と意気投合したり。明日もあるのであまり飲まずに、一次会だけでさっさと家に帰らせてもらったが、終電を乗り過ごした福岡のメンツはあの後どうしたんだろう。