ヘッドフォンの怪

サントリーの烏龍茶のキャンペーンでゲットしたiPod、およびジョギング用に購入したサムソンのシリコンプレーヤについていたインナー式のヘッドフォン(最近はステレオのイアフォンは『ヘッドフォン』と称することが多いようなのでそれに倣う)をどちらもなくしてしまった。どっちも大変良好な音質で、特にスネアドラムやハイハットの空気感、管楽器の息遣いなどにリアリティのあるところが気に入っていた。

ところが最近の市販のヘッドフォンときたら耳掛け式のやつばかりである。ヘッドフォンの音質は究極的にはドライブユニットの口径に依存する。もちろん磁性体やコーン素材の選択で、小さい口径でも高音質を確保できるのかもしれないが、口径が大きければ大きいほど大音量、かつ豊かな低音が再生できる。ヒップホップなんてのは低音さえ鳴っていればあとはどーでもいーような音楽だから、15mmよりも大きいものが作れないインナー式よりも耳掛け式のものが重低音再生には向いている。しかし、それは作る側の論理である。あそこまでオープンにしてしまうと近接効果による低音増強がなくなるため大音量にしないと低音を満喫できず、周囲への音漏れがひどい。何より僕はあの耳掛け式のわずらわしさが果てしなくいやだ。

で、泣く泣くヘッドフォンを買いに行った。行った場所がドンキというのがそもそもの間違いなのかもしれないが、思い立ったのが夜遅くだったから仕方ない。いろいろ並んでいた製品の中からドライブユニットの口径がもっとも大きいものを選んで購入。しかし、そのヘッドフォンにはやわらかいプラスチック素材でできたアリクイの口みたいな変な突起がついていた。実際にiPodなどにつないでみると、どーでもいー重低音は馬の尿のように垂れ流しになっているくせにスネアの空気感はゼロ。高音はアリクイの口のせいで完全にキャンセルされている。

怒りのあまり、家に帰ってきてただちにアリクイの口をカッターで切除。それにも飽き足らず、結局ドライブユニットが露出するまで軟質プラスチックを切り刻む。すると、さすがにiPodやサムソンについていたヘッドフォンには及ばないものの、随分ナチュラルな音質になった。製造者を調べてみると大阪の会社である。なるほど大阪人らしい発想である。何かつけさえすれば付加価値が生まれると思い込んでおるのだろう。